【Report】特別講義「生態系インフラストラクチャーを活かした防災・減災」(6月20日)

生態系インフラストラクチャーを活かした防災・減災

 講師:一ノ瀬 友博教授(慶応義塾大学環境情報学部)


Reported by 坂本桂太朗(2014年度生)

  6月20日18:00より東京外苑キャンパスの205教室に於いて、慶應義塾大学の一ノ瀬友博先生より「生態系インフラストラクチャーを活かした防災・減災」のご講義をいただきました。この日教室に集まった聴講者は36名、関心の高さが伺えました。

 

 「生態系」をどのように捉えるか、これはランドスケープデザイン領域の大きなテーマの1つであり出発点でもあります。多様性の観点から捉えたり、農の観点から捉えた論調を見聞きすることが多い昨今において、今回の講義では生態系を「インフラストラクチャー」として捉えているところが最大の特徴でした。

 

 「復興・国土強靭化の旗印のもとで現在進行中の防潮堤建設をはじめとする公共工事は、コンクリートへの依存度が高く、これまでの手法とほとんど変わりがない。」と指摘し、将来の人口減少を視野に入れると、建設や維持に対する膨大な費用負担の問題も避けられないと指摘します。これに対する1つの解として、震災後に気仙沼市舞根(もうね)地区の住民がいち早く高台への移転を決意し、堤防の建設を住民の総意として拒否した事例が紹介されました。地震と津波によって海岸線と高台の間に出現した干潟や湿地帯を、コンクリートの堤防に代わる「緩衝地帯」として捉え、そこに棲みつきはじめた生物を保護しながら、費用を抑えつつ復興を目指している事例が紹介され、生態系をインフラとして捉える有効性を理解することができました。

 

 生態系をインフラとして捉えた視点の新しさもさることながら、現地の生物調査などを通じて得た情報を地域住民の方々に伝えつつ、「飽くまでも最後に決めるのは地域住民である。」との前提の元、復興を見守る活動を続けておられる一ノ瀬先生の姿勢がとても印象的でした。

 

 舞根地区の住民は、震災後いち早く高台への移転を決意し、復興予算で建設が検討されていた堤防計画を、結果的に中止に持込みました。こうした「安全でかつ生態系に配慮した人間のあり方」というテーマに対する1つの解を実現されようとしている背景には、「自分たちのことは自分たちで決める」という地域住民のゆるぎない姿勢が根底に流れているように感じました。これらの事例を見て、現代において求められる「国土強靭化」は厚く堅い強靭さではなく、柔軟で柳のようにしなやかな強靭さなのではないだろうか、そんな風に感じた講義でした。

 

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    新谷香織 (月曜日, 02 5月 2016 22:48)

    こちらは福島県相馬市の住人。3.11で実家が流出、我が家も隣まで津波が来ました。実際復興に深く関わってきましたが、県立公園の護岸がセメントで覆われていくのに抵抗しきれませんでした。「安全・安心」を求める住民や、建設業からの要求、それに応える行政や議会に抗しきれませんでした。それでも国有林や県立公園の防災林だった地区に、自然保護地域を設置できたのはせめてもの救いでした。
    面白い話題をひとつ。塩生植物のウミミドリは、相馬市では60年代に消滅していたのですが、今回津波で地表が洗われ、下から出てきた種によって復活しました!
    長い地球の歴史の中で、このような攪乱を何度と繰り返しながら、生物は生態系を作ってきたのでしょうね。あまりにも早く逝ってしまう私たちはそのほんの一部しか垣間見ることはできませんが、人類という地球にとっては「特異な」生物が、ほかの生きものたちとうまく共存しながら長らえてくれたらと祈るばかりです。